データ流通市場の歩き方

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多様化する生活者データを俯瞰する #2 「暮らしのデータ」16分野・166選!

 

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こんにちは。本連載では、データ流通市場に関連する用語や、業界動向を解説しています。現在のテーマは「家庭と暮らし」。前回に引き続き、マス化するインターネットが「日本の家庭」にもたらした変化を追ってみましょう。

一般人の創発的なコミュニケーション消費がもてはやされた時代が終わりを迎え、インターネットがマスメディアとなった現代、私生活に関する膨大なデータから社会の動きを見渡すことは簡単ではありません。そこで私たち編集部では、「家庭と暮らし」にまつわる調査やデータベース、公開アーカイヴを集め、16区分に分けて整理することを試してみました。

この記事では、それぞれに典型的な事例を取りあげ、ごく簡単にではありますが、その分野でどういったデータが生み出されているかを解説します。

あなたにとって「家庭」とは何ですか?

私生活に関する多くの調査・統計から共通して見えてくるのは、「家庭」の多様化です。晩婚や非婚により、若者の単身世帯が急増、事実婚も、DINKSも、母子(父子)家庭も、同性カップルも、ルームシェアも、高齢者の独居も珍しくなくなりました。調査テーマにも「単」「独」「個」といった漢字が頻出します。

「一億総中流」(1970年頃)から半世紀(!)が過ぎて、誰もがみんな「好きなことで生きていく」時代に変わったと痛感させられます。「視聴率が取れない」「ベストセラーが出ない」「国民的アイドルがいない」「ファッショントレンドが起きない」……。調べれば調べるほど、よく聞かれる声を裏付けるようなデータが散見されます。止まらない少子高齢化と世代間格差に、「お金の若者離れ」と皮肉る声も散見されます。 

「家庭」そのものの意味が薄れつつあるのでしょうか。社会調査の担い手も、「じぶんにとって家庭とは何か?」と考え直すべきなのでしょうか。「あなたは家庭を築いていますか?」と問いかけることは、失礼に当たらないでしょうか。いろいろな疑問が湧いてきます。知るべき情報を見落とし、得られたデータを読み誤ると、時代遅れの「常識」に囚われて、周りから迷惑がられ、非難されて、ついには相手にされなくなってしまう。それは誰もが避けたいことでしょう。

一般世帯の家族類型別割合の推移‐全国

「あなたの暮らし」を確かめ、裏付け、広めてくれるデータたち

その一方で、「家庭」という言葉がどんなに変わろうとも、私たちはみな「暮らし」ていかなければなりません。少しでも自分らしく、豊かに暮らしていくために、「私だけの、特別なサービス」を求める意識は高まっています。その人ごとに、必要な情報がちがうのも当然です。

「どうして私だけがこんなにも生きづらいのか」と苦しくなったとき、あるデータが「同じように苦しい人たちがいる」と知らせてくれたら、それだけで小さな救いになります。 「みんなが抱える、無自覚な悩み」をいち早く突き止めれば、他人に先んじて貴重な商機を掴めるでしょう。

データとは記録された事実です。人を傷つける力も、励ます力も併せ持ちます。その意味では、あらゆる調査はジャーナリズムです。「不都合な真実」を埋もれさせないこと、「目を背けたい事実」を直視すること。そのためのセルフチェックを怠っていたら、いくら最新鋭のシステムを取り入れ、最先端の手法を買い揃えたところで、誤解と困惑をかえって助長することになりかねません。 

無料の・公開されたデータを見て歩くだけでも、無自覚な「思い込み」や「偏見」に自分が囚われていないか、省みる手がかりになるはずです。ひとつずつ、見て行きましょう。

ROOM NO.1 食事・料理

食生活の調査・分析には多方面からのアプローチがあります。定番の「好きな料理・嫌いな料理」「得意な料理・苦手な料理」はもちろん、「いつ・誰と・1日何回・どこで」食事するのか。なかには「ブリ・サケ・タイを正月・祝い・普段に食べるときの調理法」なんてデータも! 西日本はブリ・タイ、東日本はサケと喫食率が顕著に分かれること、ご存知でしたか? 一方、シリアスなデータもあります。日本で廃棄される食料は「年間約2000万トン。食料全体の26%。約3300万人分の食料、金額にして11兆円に相当。世界の食料援助の総量の約4倍」。食べることが私たちの生活にいかに密接しているか、改めて実感できる分野です。

 

ROOM NO.2 人口統計・社会調査

日本は世界有数の統計大国です。戦後まもなくから公的統計の整備が進み、長短問わず無数の指標が毎日のように発表されます。政府や自治体、大学、企業のみならず、社団法人や業界団体、シンクタンクNPO団体など、多くの組織が統計データを作成しています。見ているだけで気分が沈みそうなグラフがあります。ありふれた気づきが羅列されただけの図表もあります。その分、見落としや読み違え、調べ忘れ、誤解、曲解も生じやすいのでしょうが、人口統計には社会のリアルが詰まっています。社会調査は現状認識をコンパクトに伝えます。バズワードが振りまく幻想に囚われず、当たり前の事実を正しく知ることに時間を割きたいものですね。

ROOM NO.3 家計簿と将来設計

誰もがちょっぴり気になる「お隣さんのお財布事情」をまとめます。「平均的な収入って?」「生活費はどれくらい?」「ボーナスはいくら?」「貯蓄額は?」といった調査統計だけでなく、「夫のお小遣いは?」「ヘソクリしている? その額は?」といった意識調査も。一般販売はされていませんが、家計簿アプリや会計ソフトのデータ分析も事例公表が増えてきました。保険業や与信管理など、歴史の古い情報活用分野との合流も期待されます。個人向け商品のマーケティング手法も変わるでしょう。それに、調査結果を有効活用すれば、今まで相方に握られていた財布の紐を取り返せる……かもしれません!?

ROOM NO.4 暮らしの実態・消費者マインド

生活時間調査、可処分時間など消費者の生活実態に関するデータや、物価指数などの消費スコアを収録します。公開情報となるとやはり、政府や自治体、リサーチ会社によるアンケート調査結果が中心ですが、生活や消費に対する消費者意識のいまを探るために、個々人の居室により密着したデータ取得端末の開発が進む分野でもあります。スマホSNSでの常時接続が定着し、パーソナルデータという新たな情報資産への意識が高まっています。職場と家庭へのスマート製品の浸透、民泊や家事代行といったシェアリングエコノミー、働き方改革などの新たなトレンドに、日本人はどのように対応していくのでしょうか。

ROOM NO.5 家電・電化製品

AIスピーカーをはじめ、次々にスマート化が進む家電業界。省電力型の製品が増加する一方、スマートフォンと連動したリモコン操作やライフログ管理も浸透しはじめ、ベンチャー参入も相次いでいます。かたや、電気ストーブやもちつき機など、時代の変遷とともに統計調査から姿を消していった製品も少なくありません。スマート家電や省エネに対する意識調査やいま売れているアイテム、実際の消費エネルギーは? またリコールや製品安全に関する公共情報なども集めています。

ROOM NO.6 「働き方」の一部始終

夫婦共働きが増え、職場の役割だけでなく、家事・育児も当たり前に分担するなど、勤労世代の暮らし方は変化しています。その中で、どんな不満や不安があり、将来的に何に期待するか。ビジネスチャンスにつながりそうなデータが数多く眠る分野です。働きながら家事も育児もしているワーキングマザーの実態に触れてみてください。全世代で3人に1人以上といわれる非正規労働者の雇用環境を知ってみてください。そのうえで、今後、彼・彼女らを助ける商品やサービスを生み出すことができれば、私たちの暮らしはもっと豊かで快適になるはずです。

ROOM NO.7 ライフスタイル・健康管理

最近、寝不足ではありませんか? まわりに煙草を吸う人はどれくらいいますか? ヨガを始める知り合いが増えていませんか? ライフスタイルにも流行り廃りがあります。余暇・レジャーが健康管理と密に関わるご時世です。データをとってみると、「なるほど」と新たな発見につながります。今という時代の空気を肌感覚でなんとなく察知できます。例えば、「孫疲れ」なんて言葉も生まれる昨今、「老後、体が弱ってきて、配偶者がいないとき」に「息子または娘夫婦と同居したい」と考える人は増えているのか、減っているのか。東京ガス・都市生活研究所が21年にわたって続けた定期調査で分かります。中長期のデータ蓄積が価値となる分野です。

ROOM NO.8 ファッション・着こなし

2016年度家計調査によると、被服及び履物の平均支出額は1ヶ月に10,878円。前年比名目4.3%、実質6.0%減少しています。他方で、フリマアプリやリメイクなど、「新調」以外にファッションを楽しむ手段は活況。コスプレ衣装の市場規模も435億円規模に達します。アパレルや宝飾品、時計などの国内外市場動向と併せて、研究・教育機関等が保有するファッション史のデータベース等を集めました。「手持ちの衣類や体型のデータをいちいち入力する手間」が課題ですが、Think with Google「Fashion」カテゴリに象徴されるように、スマホカメラやSNS、EC、ニュースアプリ、VR端末、クローゼットや衣服それ自体も新たなデータ源となることでしょう。

ROOM NO.9 住まいの設備

2009年から2016年の8年でシューズクローク(土間収納)設置率が倍増、いまや74%の新築物件に設えられる一方、和室・畳コーナーを設ける物件も増えているとか。働き方改革イクメンの定着、趣味の多様化といったライフスタイルの変化、また防犯意識の高まりや住まいのスマート化によって、設備に求められる機能も進化を続けています。不動産サイトのビッグデータ分析をふまえた「理想の家」も登場し、住まいづくりのプロセスにも変化が見られます。人気の設備や防犯カメラ等に対する意識調査、住宅整備、住宅建設、建築費用、地価や流通物件の動向など、住まいの設備に関わるデータを集めています。

ROOM NO.10 家族の制度・生活史(ゆりかごから墓場まで

家族という制度そのものが揺らいでいる昨今、私たちが早急に取り組むべき課題は何でしょうか。ひとり親、家庭内暴力児童養護施設、養子縁組、生活保障、高齢者住宅、老人ホーム、介護施設……。重苦しい用語が並びますが、現実から目をそらさないことから始めたいものです。基本統計を頭に入れるだけでは事足りません。「少子化に関する国際意識調査」によれば、交際相手との出会いを求めるとき、日本を含め各国とも「友人に紹介を頼む」が最も高いよう。なんだか和んでしまいますね。社会課題は、その国の文化と切っても切り離せないのです。だからこそ、社会統計や意識調査だけでなく、行動データの蓄積が求められる分野でしょう。

ROOM NO.11 ソーシャルネットワーク・パーソナルボイス

モバイル端末保有率が95%に迫り、SNS利用が71%を超えるなか、情報メディアの利用目的である「コミュニケーション」のあり方が大きな変化を遂げています。対話の相手が企業や政府、社会全体にさえ広がりを持ちうる一方、オフラインの関係に基づくパーソナルなやり取りの密度も、かなりの部分がSNSに影響を受けている模様。マス・マーケティングのあり方も、報道メディア向けのメッセージ発信に終始してはいられず、インターネット上のおしゃべりへの参加と傾聴が欠かせなくなりました。通信手段が進歩するにつれて変わる、社会、家族、個人のコミュニケーションに関する調査データなどを集めています。

ROOM NO.12 自宅で育てる動植物

見ているだけで癒されるデータが満載です。「犬の品種ランキング1位はトイ・プードル、猫で人気なのはスコティッシュ・フォールドと混血猫、人気の観葉植物1位はサボテン」「ガーデニング・家庭菜園の関心度が高い都道府県の1位は島根県」など雑談のネタにもなる統計から、「20代男性のおよそ4人に1人は家でグリーンカーテンを作ったことがある」「男性は外で“庭仕事”に凝り、女性は手軽に観葉植物やベランダガーデニング」といった属性調査も。酪農業のIT化やスマートホーム製品の普及、生態学遺伝子工学など隣接分野の技術革新が波及するにつれて、今後、新たに取得できるデータの充実も期待される分野です。

ROOM NO.13 冠婚葬祭・年中行事

冠婚葬祭や年中行事に対する意識調査に加え、文化財や観光資源に関するデータも収録します。ライフイベントや季節の催事は、昔から個人の消費生活を大きく変えるものとして重要視されてきました。昨今では、核家族化、少子高齢化で存続が危ぶまれる、地域の伝統行事。お中元・お歳暮や年賀状といった古くからの習慣が漸減する一方、インバウンド需要やシビックテックを端緒とした地域愛ムーブメントをきっかけに、郷里の風習やお祭りが見つめ直されることも少なくないよう。恵方巻きやイースターエッグハロウィーンなど新たなハレ消費が普及する一方、いちばん大切なイベントは交際や結婚記念日だったりと、パーソナル化傾向も見られます。

ROOM NO.14 じぶん磨き・身の回り品

平均寿命100年時代の訪れが現実味を帯び、終身雇用だけに依存した人生設計の限界も見えてきました。労働過多だと言われつつ、余暇時間は増加傾向。残業抑制の本格化で、「趣味の時間」の増加も見込まれます。副業推奨により本業へのフィードバックを狙う企業もちらほら。戦後の経済成長と都市化の進展により、血縁や居住地、職業による制約が弱まったことで、「自分」が主語のライフプランが容易になった分、現代人はより長く、より細かな目で「私」の差別化を迫られることになりました。情報流通の国際化が進むなか、人々はどのように心身の健康を保ち、美しさを磨いているのか。自己研鑽や趣味、美容、所持品に関するデータを集めます。

ROOM NO.15 家具・インテリア

室内にある、暮らしに必要な家具・家財のデータを集めます。例えば、日本家具産業振興会の統計は、国別の家具輸出入データや国内家具出荷額などが確認できます。「家具企業要覧」(東洋ファニチャーリサーチ)は、業界唯一の本格的なランキング誌です。この他、家具や住宅素材の3Dデータのダウンロードができるサービスも増えているようです。公開情報には、利用者(ユーザー)よりも提供者(メーカー)のデータが多いよう。一度買ったら、長いあいだ使い続ける商品であるだけに、利用者に関する長期の詳細なデータに需要が集まるであろう分野でしょうか。

ROOM NO.16 家庭の医学・科学

2015年度診療報酬改定により、大病院受診のハードルが上がり、セルフメディケーション制度も導入されるなど、医療費抑制へ向けた取組みが進んでいます。人生100年時代、医療や健康は与えられるものから、生活者一人ひとりが自己責任で守るべき存在へと変貌を遂げるのかもしれません。 人気テレビ番組の健康レシピ、症状・薬効から検索できる市販薬データベース、在宅医検索サービスなどのすぐに役立つデータや、毎週更新される地域別感染症発生件数など、家庭の医学に関するデータを集めました。また、自宅で試せる科学実験集も掲載しています。データポータビリティの権利が、日本でもこれから盛んに議論されるだろう分野です。

「生活調査」は、ほとんど再利用されていない

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こうしている間にも、世界中のあちこちで「暮らし」に関するデータがどんどん生まれています。それら一つひとつをいかに効率よく探し出し、玉石混交を見極め、根気よく向き合い、忘れずに保存しておき、鋭いアイデアを導き出す助けとするか。

どこまでの作業が自動化できて、どこから先は人の目で判断しなければならないか。「自然に集まる」仕組みづくりと、「無理なく続く」習慣づくりを、暮らしのなかにどう取り入れるか。 当然ながら、重宝されるデータは時代とともに変わります。「分類法」も「整理学」も、その都度、新しく変わっていかなければなりません。

理想をいえば、複数の視点に立って、多種多彩なデータを規則正しく取って、根気よく世の中に問い続けたいものです。「あなたの好きな調味料は何ですか?」といったニッチな質問でも、5年や10年も投げかけ続ければ、生活トレンドを推し測るための立派な資料になります。 

もっとも、運動不足の解消にも似て、言うは易く行うは難し。残念ながら、過去に注目された統計が、再び日の目を見ることは、さほど多くはありません。多大な時間と費用をかけて行われた調査は、公表直後こそ社内会議や外部メディアで話題にされますが、ほとんどがすぐに忘れ去られてしまう。

一つ一つのデータを「そのとき限りのもの」で終わらせないためには、 “必要なときに必要なデータだけ簡単に”取り出せる仕組みが欠かせません。コラムやブログ、リリースを定期的に発表できる企業は、通常業務に「データの流れ」を組み込んでいます。だけど、忙しい日々のなかで、あらゆる法人が自前でそれを築き上げるのは簡単なことではありません。実のところ、編集部で手分けして事例を集め、分類を考え、整理する作業は、けっこうな重労働でした。

似たような仕事が、いまの日本各地の職場で行われているのだとしたら、二度手間どころの話ではありません。人手不足がいつ終わるとも知れないなかで、「探して、調べて、まとめる業務」は、なるべく集約し、効率化したいものです。

そこで、日本データ取引所では、多忙な企業担当者の代理人として、社内に埋もれた情報を、社外に散らばるデータを、気軽にまとめられるサービスを準備しています。今後このブログでも、その詳しいサービス内容をお伝えしていきたいと思います。

参考データ・事例集

本連載第23・24回の参考データ・事例集を作成しました。「家庭と暮らし」のデータ・事例リストにてご覧いただけます。

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(著作:福田千津子+編集部 編集・構成:編集部)